本質病またはレントゲン症候群
本質病という非常に厄介な病気がある。
私は元患者であるが、いまだに後遺症が残っている。
ときおりぶり返す。
本質病とは、物事を
「本質的には結局……」
とか
「要約するとそれは……」
とか
何でもかんでも単純化するのが主症状である。
誰でも発症するが、学生時代に数学や物理や社会学と仲良しだった人が特に罹患率が高いとされている、根治の難しい病である。
罹患すると骨組みしか見えなくなるので「レントゲン症候群」とも言ってもよいだろう。
もちろんときには本質を探ることが必要な場合もある。病的でない場合もある。
「旦那に飯が不味いと言われた。どうして私の作る料理はこんなにも不味いのかしら」
そういう場合は料理が不味い本質を探ったほうがいい。いや、探るべきだ。
不味い味噌汁しか作れない人は、野菜炒めも作ってもどうせ不味い。魚なんか焼いた日にはとんでもないことになろう。
料理が不味いのは「料理のイロハ」の本質を理解していないからであり、自身の誤解の本質を解く必要があるからである。
料理が不味いのには理由がある。
火加減が適当、
出汁という概念が形成されていない、
分量を正確に計っていない、
などなどなどなどなどなどなどなど。
初心者がおいしい料理を作るコツは「とにかく書かれている通り正確にやること」である。
これが本質だ。
この本質を忘れて試行錯誤しても料理はますます不味くなり、道に迷い、途方に暮れる。
ともあれ、なぜ自分の料理がまずいのか分析するのは、普通の健全な人間の営みである。
だが例えば。
「この曲とあの曲のコード進行はほぼ同じだ。つまり同じ曲だ」
とか
とか
言い始めると危ない。すでに本質病(レントゲン症候群)の症状があらわれている。
物事にはパターンがある。というか多かれ少なかれパターンがなければ混沌しかない。混沌しかないものは人間は理解できない。何か統一感があればこそ伝わるものがある。
そして全く同じパターンであったとしても視点、論点、微細なニュアンスで伝わるものは全く別のものになる。
少年が少女に恋し、紆余曲折の果てにそれが実るも、やがて少女は不治の病に侵されていることがわかり……
みたいに典型的な、ちょっと前に流行ったような物語であったとしても、描かれ方が違えば印象は180°ガラッと変わる。印象が違うということは別の物語だということだ。細部というのが非常に大事なのだ。
ところが本質病患者には骨組みしか見えなくなるので
「結局、最近の小説なんて全部同じ話じゃんか」
とか言い始める。
……と何のためにこんなことを書いているかというと、ひどい本質病の人というのを時折見かけるのだけど、それでは人生が楽しめないのではないかなと思うからだ。
昔、数学者の秋山仁の本でちょっとうろ覚えなのだけど、こんなことが書いてあった。
天才と言われるような数学者はすごいスピードで研究街道をひた走るのだという。秋山仁はそういうタイプではなかったため進むのはのろいけれども、その代り些末な出来事、研究街道の道端の草花を愛でながら研究生活を送ることができたのだそうだ。
大したことのない細かなことというのが大事なのだ。
ちょっとした忘れがちなこと。
さっき炊いた飯は昨日炊いた飯よりなぜか美味い、とか。
いつも黒いズボン履いてるからたまにはグレーで行くか、とか。
いつも電車で見かける同年代の女性、やけにめかしこんでるな。今日は合コンかな、と想像してみるとか。
生きる楽しみは「これといった本質」などではなくほんのちょっとした小さな変化の積み重ねなのだと思います。
、
夏は八重山に行きます
東京⇔石垣の往復の航空券を取った。
最近は一人旅をしたのは三年前の瀬戸内国際芸術祭が最後でした。
興味深い経験ができましたが,今年は芸術というより自然に埋没してされるがままにされたいと思い、石垣島に行くことにしました。
沖縄、中でも離島では本土と違い、昔ながらの慣習がいまだに根強く残っている。
でも、だからこそ伝統が失われずにナマのまま続いている。
本土では少年少女が何か楽器をやりたいと思ったとき、習いにいくのは大抵ピアノやギターのような洋楽器だけど、沖縄では三線という選択肢が普通にある。
夕暮れ、どこで夕飯食べようかなとか考えながら歩いていると、普通のおうちの軒先でオバアが三線片手に渋い声で歌っているのが普通の光景。
いまだに土地の文化が生きているのです。
ま、能書きはともかく、理屈はともかく、離島で何もしないでくつろいだり、きれいなサンゴ礁でシュノーケリングなんかをしたり、お祭りに参加したりしたりするのが楽しみです。
Youtubeにupしました。
おはようございます。
東京地方,今日も暑くなりそうです。
そんなときの電車に乗らないで過ごせるのは本当に有り難いですが……。
蒸し暑くなりそうな朝,涼しげなこんな曲はいかがでしょう?
2年前の夏にパーッと作った短い曲ですが、後から自分でも気に入りました。
アルバム配信しています
4月下旬から5月初めの間,友人の木版画家,池田実穂さんの個展が開催されました。
僕は個展のBGMを作ることになったのですが,池田さんの詩画集「十七の雫」に沿って
十七曲の音楽を作りました。
現在,iTunes Store,Amazon Music,レコチョクなどで配信させていただいております。
どうか宜しくお願いいたします。
ぜひご試聴いただければと思います。
Amazon Music
近所で
美味しいカレー屋さんがあります。
いつも一人で行っては辛さで大汗をかきながら、無我夢中で食べています。
今日は入り口にスッポンがいました。
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今日は3時までお仕事で、久々に実家に帰ります。
おみやげは日本酒。
栄光冨士「仙龍」
山形のとってもおいしいお酒です。